藤永優が拘る製品開発 【HYPER REV レーシングベルト編】

皆さまこんにちは〜
今日はベルトについてお話をさせていただこうかと思います。

弊社が自信を持って販売しているベルト(ドライブベルト)は、今から約7年前に台湾BANDO様とJOSHO1藤永の間でプロジェクトが始まりました。
プロジェクトの主は、速いベルト!レーシングベルトを作る!です。

私は当時、純正のベルトを使っており、まわりのライダーもほとんどが純正でした。外品ベルトも存在しましたが強度の面で不安があり使う事はありません。当時の車両は今と違いフルパワー仕様、多くはありませんが度々ベルト切れも起こっていました。

ベルト切れの原因はいくつかあります。
まず代表的なところでいうと経年変化・老化、次に強度不足、お次はベルト角度に合わないプーリー角度を使った場合です。
(YAMAHAは28度ベルトと言って、プーリーの面角度14度に合わせた14度ベルトになります)。
最後は、CVTの軸間設計で作っているベルトを無理矢理プーリー側で引っ張る事による断裂です。

私は長い間スクーターレースから得た知識で「どんなベルトがベストなのか」「どんなベルトが速いのか」大体の事は分かっていましたが、個人で作る事は絶対無理。
大手メーカー様の力添えがなければできない事なので、当時BANDO様からお声がかかるまで手付かずの部分でもありました。
お声がかかった時は「やったるか~」って気合い入りましたね

まず始まりはベルトサイズの選定→幅・長さ→最後に目視ではわかりませんがベルトはいくつもの層になっており、その一層一層のゴム材の硬さを選定する事でした。
なんと上記の組み合わせを全て行うと「1800通り」もあったんです、まじか~です 笑、始まりの選定にはかなり慎重に会議しました。
そこからが大変、サイズの決まったベルトを日本で何本も製造し台湾に送りサイズ違いを幾度もテスト、テスト後にまた選定の見直し→製造→テストです。
BANDOスタッフと私とで、何回も何回もサーキットに行きましたね。暑かったな~

テストの目的は「ノーマルを超える事!」熱による性能低下があるか、乗り味は勿論です。
最終目標は “サーキットレコードを出す!” “レースで必ず優勝する” でした。(優勝は私の目標だったかも・・・)

幾度かテストをするうちに、ベルトの長さはノーマルより少し長め(ノーマル約79.5~79.7mmに対し80.3mmに設定)がよい、ただしノーマルのベルト幅だと高速付近でベルトが遊ぶ(プーリーが最終的にドライブフェイスと一番近い時、トルクカム側のベルトの位置がまだ余裕があって長くした利点が活きていない、引っ張り切れていない感じ)って事がわかりました。
ベルト幅をノーマルが約21.5mmに対し21.9mmに設定、この幅だとプーリーがドライブフェイス側に一番近い状態(シムセットなどがノーマルベルトの時と同じでも)ベルトは今まで以上にワイドに動くし、しかもトルクカム側も引っ張り切れるサイズだという事がわかりました。(ここに行き着くまでいくつものベルト幅のテストも行いました。)

ベルトサイズが決まったらお次はベルトのゴム材とベルトの芯線の設定です。
ベルトのゴム材のテストは面白くって、いくつかの層に柔らかいとか硬いとか、その位置を変えるだけで加速感は全く違うんです。
これはベルトが常に面に対してくっ付いていないって事なんでしょう、BANDO様からも教えていただきました。
プーリーはケース内側から外側に移動しますし、しかもベルトが回転する際にプーリーをまたぐ時ベルトは変形している、面に対して面では当たっていないって事、ベルトって深い~~って思ったね。

お次は芯線のテスト、芯線は大きく2種類でケブラーとアラミドでした。
どちらもアラミド系の材料ですがここでいうケブラーは硬く収縮しない物、アラミドは柔らかく経年変化で収縮する物と思ってください。
最終決定したサイズとゴム材にこの2種類の芯線をテストさせていただき、私は一発でケブラーに決めました。

そのポイントは2つ。
一つはエンジンのフィーリングがとても良い、加速感もよく駆動系の切れ味が出た感じ。アラミドも同じような感覚はあったのですが熱による収縮が走行中に起こっているのかやはりケブラーが上って感じでした。(これは、この特殊なベルトだからかもしれませんが。)
2つ目のポイントは、熱による収縮です。
私たちのような改造バイクでセットを出していると、熱による変化でいくつかセットが変わってしまう物があります。
例えばセンタースプリングのタレも一つでしょう、ベルトが熱による収縮をしてしまう恐れがあるとベストセットがずれる可能性がありますのでそこは避けたいと思ったからです、実際のテストでもその様な問題も出ていましたので・・・。

最後はベルト角度も試しました。
13度にするとベルトの腹(下側)が当たり加速感は鈍く、15度にすると加速感は良いけどベルトの上部が摩耗しやすくなり長い間の性能を持続する事ができないと判断。
やはりプーリー角度に合ったベルトの角度が一番良いという結論になり、構想から約1年間のテストを経て「HYPER REV ベルト」は完成しました。

販売前の実績投入は今はなき台湾屈指のロングストレートがあったTISサーキットでした。
このサーキットのストレートは非常に長く、高速サーキットで強いSYMのファイターが圧倒的にトップスピードは速い、低速セクションではシグナスがコーナーリングスピードで優っているためタイムは互角でした。
私は予選でトラブルを抱えポールポジションは獲得できませんでしたが、レース開始スタートから他のシグナスを上回る加速とトップスピードで前車をどんどん抜いて自身初の「TIS優勝」を実戦投入したHYPER REVベルトで勝ち取る事ができました。
も~スタッフ共々嬉しくってしかたありませんでしたね、開発の醍醐味ですね、そこから数年間は知る人ぞ知る私の成績。
一昨年の私が負けたレースで、私に変わり台湾チャンピオンを獲得した台湾でもっとも信頼しているライダーパアパア、唯一このライダーにスポンサーしていたんです。

HYPER REVベルトはノーマルエンジンからハイパワーエンジンまで対応できる画期的なベルトだと思っており、ノーマル補修や小改造な方にもうってつけで実際に私の社用車にも取り付けています。
経年変化が起こりにくくノーマルにない遊び心満載のベルトを是非あなたに使っていただきたい、JOSHO1魂の詰まった1本をお試しいただけましたら大変嬉しく思います。
HYPER REV RACING BELT 商品ページ
設定車種 : CYGNUS X ・ BW'S R(2015~2017y)
価格 : \8,470(税込)